『あやしい探検隊バリ島横恋慕』

目黒ええと、次は『あやしい探検隊バリ島横恋慕』。1998年11月に山と渓谷社から出て、2001年1月に角川文庫と。これはどこかに連載したの、それとも書き下ろしたの。どこにも記載がないんだ。

椎名これは書き下ろしだね。おれ、覚えているんだ。この元版が出たとき、お前に批判されたんだよ。つまらないって。

目黒あっ、そうなの?

椎名書き下ろしの約束をしてたんだけど、なかなか書けなくて、それで対談をどんどん挿入した。

目黒問題はそれだよね。対談ではすごく真面目な話をしているんだ。それが本文にあってない。

椎名対談を随所に入れたのはページ稼ぎだよな。これは失敗作だと本人も思うよ。

目黒一応紹介しておくと、「あやしい探検隊」シリーズ海外編の第二弾とあるのは、『あやしい探検隊アフリカ乱入』と同じメンバー、つまり椎名誠、沢野ひとし、大蔵喜福、三島悟の四人で、今度はバリ島に行ったと。その2週間の記録だね。だから海外編の第2弾ということになったんだと思うけど、対談をいっぱい入れて、真ん中には「沢野ひとし絵画館」とカラーページを差し込んで、さらには写真(これは椎名)も挿入して、やっと一冊にしたという本ですね。面白かったのはね。

椎名面白かったところがあるのか?

目黒あるよ。インドネシア語は日本語と似てるって話。あれは面白いよね。その対比表を掲げると、次のようになる。

  • 笑う→ゲラゲラ
  • あなた→アンタ
  • 済んだ→スダ
  • 飲む→ミノム
  • 名前→ナマ
  • 取り替える→トカル
  • 好き→スカ
  • 戻る→モンドール

不思議だよねえ。こんなに似てるの。でも、このくらいかなあ。面白いのは。

椎名そうだよなあ。

目黒そうだ。沢野が日本野鳥の会に入っているのを最近聞いた、という話が出てくるんだけど、鳥の観察のために双眼鏡を使うから、あいつ、詳しいんだよ。

椎名何に?

目黒だから、双眼鏡に。で、このころだと思うけど、双眼鏡を買いに行こうと言うんだ。突然だぜ。目黒くんは競馬場に持っていったほうがいいと言うのさ。で、ヨドバシまで連れていかれて、これを買いなさいとカールツアイスの双眼鏡を指さすの。なんと16万円もするんだよ。ちゃんと講釈もするの。双眼鏡のポイントは倍率ではないって。ポイントは視野の広さだって。ふーんと聞くだけだけど、まあ、双眼鏡があれば競馬を見るときも面白いかなという気もあったから、買って帰ってきた(笑)。

椎名お前の双眼鏡を買っただけ?

目黒うん。あいつ、いつも突然言うんだよ。シャツを買いに行こうとか、クツを買いにいこうとか。おれ、シャツも靴も欲しくないんだぜ。でも、まあ沢野につきあって上げようかなと思うわけだよ。だからおれ、沢野とお揃いのもの、結構持ってるよ。まったく同じで色だけ違うやつ(笑)。

椎名なんでお前を誘うのかなあ。一人で買いに行けばいいのに。

目黒それを思い出したよ。

椎名ま、そんなとこだな。

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